定款4条の1 看護職の資質向上に関する事業 諸外国との教育交流
2019年(平成31年度)国際教育交流事業inインドネシア

【訪問国】インドネシア共和国(ジャカルタ・デンパサール)

【日 程】2020年1月13日(月・祝)~1月17日(金) 3泊5日

【訪問先】

インドネシア国看護協会

・株)スヴェンソン 医療用ウィッグの工場見学と交流

【内 容】

1.インドネシア共和国看護協会様とのセッションおよび交流

双方自国の医療政策、がん患者に対する看護事業に関わる協会の役割についてセッション。

当方がん関連専門・認定看護師(プロフェッショナル)の活動紹介。

2.企業訪問 株)スヴェンソン/医療用ウィッグの自社工場見学と工員との交流 

(がん関連認定看護師の活動紹介および医療用ウィッグの利用実態紹介)

【参加者】がん関連の専門看護師・認定看護師5名、女性外科病棟看護師1名(計6名)

がん性疼痛看護認定看護師 東邦大学医療センター大森病院
緩和ケア認定看護師 東京医科歯科大学医学部附属病院
がん看護専門看護師
(乳がん看護認定看護師)
昭和大学病院
がん看護専門看護師 東京都済生会中央病院
がん化学療法看護認定看護師 杏林大学医学部付属病院
女性外科病棟看護師 東京大学医学部付属病院

・インドネシア共和国看護協会様とのセッションおよび交流

1)各看護協会の紹介     

・東京都看護協会:大橋 ・インドネシア看護協会:会長

2)参加専門・認定看護職の活動紹介         

3)質疑応答

[所感]インドネシアの人口は日本の約2倍の2億6千万人。首都ジャカルタは人口が集中。インフラ整備が途上(道路整備・地下鉄・電車)。疾患等の疫学統計も信頼できるものが得られないのが実情とのこと。主要疾患別の看護委員会と8つの看護共同体を設置して活動している。看護協会は国内で本会1設置であるが、中央委員会として地域委員会は34州、514地区、5,614群に対応。また、専ら中東方面に仕事を求めて移動する看護職のための海外委員会も設置されているとの事(UAE、カタール、クウェート、サウジアラビアの4か国)。

看護職の免許更新は5年毎に義務付けられている(研修参加ポイント等)。日本の看護職のスペシャリストの認定元や種類と活動、更新などに対する質問を受けた。

インドネシア国看護協会様との意見交換の様子
インドネシア国看護協会施設前

 

株)スヴェンソン 医療用ウィッグ工場見学・交流

・当協会の紹介 ・専門・認定看護職の活動紹介

[所感]現地スタッフの9割が女性で約100名以上の現地採用。工場の製造行程を見学させて頂いたが、ほとんどは手作業によるものであることに驚く。また、各工程では全員が体験した。髪の毛の取り扱いは非常に繊細で、9割をセミーオーダー、1割はオーダーメードで受注しているとのこと。その手間のかかり方を参加者は確認し、患者支援の際の何に重点を置くべきなのかを考えるための参考になるとの感想が聞かれた。

現地スタッフから歓迎受ける(当日民族衣装にて)
行程の実際を体験

【参加者感想】

・異文化に触れ、さまざまな方と交流することで、がん看護のプロフェッショナルとしての自分の立ち位置や役割を再認識することができました。今後は、得た学びを医療スタッフと共有し、アピアランス支援に役立ててきたいと思います。

・インドネシアでは看護の専門分野の1つとして「ホリスティックケア」が挙げられていました。日本の医療施設において今後、これまで対応したことのない国籍の方々への看護の提供が身近になる。私自身もそれら人々に緩和ケアの中でホリスティックケアをどのように提供できるか学びを深める必要性を今研修終え強く感じました。

・インドネシア看護協会は看護師の能力向上と質保証への対策を行っている現状を学びました。一方がん看護はがん患者の増加が推測されるものの、不明瞭な統計と行政の要請で動く傾向があるため、がん看護のニーズが現場に反映されていない現状を知りました。現場のニーズに応じたがん看護の提供は、今後の課題の一つだと思いました。今回の研修に刺激を受け、私も海外のがん看護の動向に目を向け、研究論文やインターネットから情報を得て自分の活動に活かしたいと思いました。

・日本と同様にがん看護のスペシャリスト認定制度があり、大学や病院で勤務されていることを知りました。がん医療については発展途上であり、亜熱帯という国の特徴からも感染症看護が重要であることが理解できました。日頃、患者に情報提供しているウィッグが、品質にこだわり作成されていることを知ることができました。患者一人のQOLのために遠く国を超え多くの人が関わっていること、それも大きなチーム医療の一つだと感じました。

・インドネシア看護協会が看護職の地位向上に携わっていることが理解できました。最新機器や設備、そして優秀な専門医は首都ジャカルタに集中していて、地域により医療格差が生じていました。がん医療におけるアピアランスケアは治療に伴って生じる外見の変化を医療用ウィッグなどで補うだけでなく、その人らしく生活することを支援するケアと考えています。遠く離れたバリ島で丁寧に作成された医療用ウィッグは工場で働くスタッフの方々がその技術に誇りを持って仕事をされていることに感動しました。

アピアランスケアの中でも、とくにボディーイメージに影響の大きい脱毛のケア対して、様々な支援事業や作成後のケアが行われていることを知り、大変興味深かったです。ひとつひとつ丁寧に手作業されたウィッグ、ご利用者が大切にしているウィッグには、個々の物語が存在します。道具として捉えるのではく、その人の一部として関心をよせ代償レベルに合わせたケア介入を行う必要性があると強く感じました。