災害支援ナースに求められたもの

 能登半島地震に対する当会からの石川県への災害支援ナースの派遣は、1月12日-2月23日まで48名の方にご協力いただきました。災害支援ナースの皆様と派遣していただいた施設の皆様に心より御礼を申し上げます。

 当初から被災地の状況把握が困難であったことで、派遣決定が3日前になることもありました。メディアの情報と公開されている石川県災害対策本部会議の様子で現地の混乱と困難な状況を垣間見ながら、協会として行ったことを共有するため、東京都看護協会災害支援ナースフォローアップ交流会を3月15日に東京都看護協会会館研修室で行いました。

 交流会に参加された災害支援ナースの中から、5名の方に活動報告をお願いしました。報告内容を少しご紹介いたします。発災直後で避難所の体制が整っていない時期には、ライフラインが復旧しない避難所の衛生管理、物品管理を行いながら、利用者の健康管理・生活援助を開始されています。また、避難所を回っている別の医療チームとの情報交換と協働、避難所の外で車中泊をしている方への声掛けなど必要な事を自分たちで考えて行動する必要がありました。また避難所の平面図を病棟マップのように作成し、各場所に滞在する全員を把握し健康管理情報を次のチームに引き継ぎます。その重要な記録と作業は避難所が寝静まった深夜に行ったそうです。ある避難所では入り口のドアが壊れた状態で寒さがひどく、本当に大変な環境だったとのことでした。

 また、金沢市内の1.5次避難所に多くの被災者に異動してもらう方向で調整が進む1月後半には、1.5次避難所を病棟に見立てるかのように、派遣元の垣根を超えシフトを組んでチームとして生活支援と健康管理活動を始めた経過が報告されました。ライフラインが復旧しない時期の避難所から、ある程度長期的な見通しを必要とする1.5次避難所まで、一貫して災害支援ナースに求められたのは、「現状確認と情報収集」、「必要事項の優先順位付け」、「持続的な解決方法と業務分担」「初めて会う医療従事者や行政職とのチーム活動」などに必要とされるマネジメント力と実行力であると思いました。公衆衛生の保持と物理的環境を調整すること、ケアの質と継続性の担保、もちろん専門職としての誇りと倫理観も含めてです。改めて看護職の力を確信した交流会でした。

 


[災害支援ナースフォローアップ交流会 2024年3月15日開催]

 

 能登半島地震の状況と災害支援ナースの活動を会員の皆様と共有したいと考え、6月の東京都看護協会通常総会終了後に特別講演を開催して、石川県看護協会小藤幹恵会長から発災直後の状況、石川県と看護協会の動き、看護職の支援活動についてお話をいただきました。特別講演は、東京都看護協会会員マイべージから7月26日までご覧いただけます。

 

 重要な活動をする災害支援ナースは4月の改正医療法により、派遣に係る実費を公的に負担し、災害支援ナースに係る業務を「医療機関における業務」として、安定的かつ安心して実施できる環境が整備されることになりました。また、日本看護協会の災害支援ナースは、吉川英治文化賞を5月に受賞いたしました。災害支援ナース、一人ひとりの成果であると思います。皆様の活動に心より感謝を申し上げます。

 

[特別講演 2024年6月20日開催]

 

吉川英治文化賞[公益社団法人日本看護協会ウェブサイト]

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