昔病院の職員だったころ

 もうずいぶん昔、昭和だったころの話だが、三年ほど病院に勤務していたことがある。事務職であったが実に新鮮で楽しかった。

 時々、看護科長さんにこっそり呼ばれ、副科長さんたちとお茶と菓子で、わいわい茶飲み話したのも楽しい思い出である。

 当時でも当然ながら法による病院職員の健康診断はあった。当然高度医療を標榜する大病院だったので最新の機材で受診できると内心喜んでいたのだが、健診機関の古びたレントゲン車が来て、それを使うのだとわかったとき、ひどくがっかりしたのを覚えている。また、当時は健康診断を受ける職員が少なく、担当だった私は副院長にお願いし、急遽受診キャンペーンを行ったことがある。その成果を見るべく件の副院長と受診したのだが、会場には職員はおらず、ぽつんと二人で受診した。問診した若いドクターに「聴診器の使い方を教えてやったよ」と後で副院長が笑いながら話していたのは愉快だった。

 今と違い事務方は勿論のこと医師や看護職などの医療人も結構喫煙していた。そろそろ医療機関では喫煙はまずいんじゃないという雰囲気も出てきた頃で、私も着任早々周りの職員から勤務中は止めてくださいね、と言われ、どぎまぎしたのを覚えている。

 何せ呼吸器の先生でも堂々と煙草をくゆらしていた時代であり、さすがに病院の会議室では灰皿は置いてなかったが、多くの先生が医局や自室では吸っていたようである。

 

 人の命を救うという使命感を持った人々との出会いは当時の若い自分にとって本当に得難い経験だった。特に医療現場で毎日見聞きしたことは圧倒的に強烈だった。毎日がジェットコースターのような業務であり、当時は本当に大変だったが、私にとっては後々までその勤務が何か誇らしいものとして残っていた。

 現在の職に就いたのもその時の強烈な経験が影響している。

事務局長 黒川 亨