第18回 2017年2月13日 『入れ歯と結婚と就職の話』

 入れ歯と結婚と就職の話

 

私事で恐縮だが協会事務局に勤務する以前、都立看護学校の校長を10年くらいやっていた。多くの卒業生を看護の現場に送り出してきた。このため、事務職だが勝手に看護職の応援団だと思っている。

確か、戴帽式の式辞だったと思うがこんなことを言った。それが、「入れ歯と結婚と就職の話」である。ある歯科医の話では、入れ歯はどんなに微妙な調整をしても満足しない患者さんがいる一方、多少ガタついていても「これで何とかします。」という患者さんもいるという。結婚についても「ぴったり来ないから離婚」という夫婦もいれば、多少の食い違いがあるのは当たり前と添い遂げる夫婦もいる。就職についても「ここは私の希望した職場と違う」と早期に離職する人もいれば、周りの要請に応えようと努力する中で成長していく看護師もいる。

大切なのは、「理想的にぴったりした、入れ歯や結婚相手や就職先を見つける」ことではなく、周りが自分に求めていることに応えようと努力し、自分自身が変わり成長することである。実はこの話は、神戸女子学院大学名誉教授の内田樹氏の受け売りなのであるが、看護師さんたちの研修などで話すと、「自分さがし」や「自己実現」ブームを怪しげに感じていた人たちから「私もそう思う!」とガッテンされることが多い。

非正規雇用などで、日本社会は若者を育てなくなっているが、看護界は毎年5万人以上の新人看護師を育成している。看護大学・看護専門学校だけでなく、実習を受け入れている病院等も共同して育てている。また、新人教育にも熱心に取り組んでいる。看護基礎教育の1/3を占める臨地実習が普通の若者を看護師に窯変させる「るつぼ」だと思う。この点では看護基礎教育は素晴らしい仕事をしている。

日本看護協会が募集・編集する「忘れられない看護エピソード集」を読むたびに、看護職の仕事の大変さと素晴らしさをもっと多くの方に知ってほしいと願っている。そして、協会の仕事の中で卒業生達が病院の現場で活躍している消息を聞くことが、私のひそかな楽しみとなっている。

 

平成29年2月20日 事務局長 松原 定雄

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