第17回 2017年2月6日 『ラビとY氏』

ラビとY氏

ラビは7年前に看護を開始したY氏のペットで、ミニチュアダックスの老犬です。

ラビは訪問すると必ず5~10分間は吠え続けます。いい加減に顔を覚えて欲しいと思いやっても吠えます。番犬としては優秀でも、こちらの本音としてはうるさいのです。
ラビはY氏を車椅子移乗中に車椅子の下に入って、手や尻尾がひかれそうになったり、集中してケアしている間に、こちらの足元に静かに近づいてびっくりさせられたり、変な音がするぞと思えば、ベッド脇で老犬のお見本のように鼾をかいていたり、Y氏以上に自分をアピールするのです。

Y氏は難病を抱え、晩年は心不全・大腸がん・脳梗塞を発症し、何度も死の淵から這い上がり一生懸命リハビリに取り組みました。家族も少しでも自立した生活ができるように医療介護の環境つくりに熱心に取り組まれました。ベッドサイドでリフトを使い、車椅子移乗を可能にしました。玄関スロープを使って眼科を受診して視力を回復させて、好きなドラマを見させてあげたいと言った家族の話も忘れられません。

Y氏は家族・関係者の願い届かず、昨年暮れ少し前に病院で生涯を閉じられました。

病院から家に戻った後、グリーフケアに伺った時の事です。私が棺の前で手を合わせ、家族に挨拶を終えた時に、ラビが吠えずに静かに登場しました。そして、座っている私の膝元に顔と体を摺り寄せること数回、私が頭と体をなでると頷くように首を動かしながら家族の膝元に寄って行きました。その時に家族が教えてくれたことあります。ラビは亡くなったY氏が戻り、布団の上にいる時に、何度も布団の周りを廻りY氏にすり寄り、納棺の時には短い手と足を伸ばして棺のふちから何度も覗いたということです。

ラビは今も仏壇の前で番犬を果たしていることでしょう。鼾でもかきながら。

 

千駄木訪問看護ステーション  小嶋奈々子  

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